野球において試合の開始前には「始球式(しきゅうしき)」と呼ばれる来賓が投手役として投球を行うセレモニーが実施される。
その始球式では打者はどんなボール球や絶好球が来ても空振りをするのが慣例となっている。これは日本で最初に始球式を実施した際に、投球を行った政治家・教育者の大隈重信(おおくま しげのぶ、1838~1922年)が偉すぎて、打者が空振りをするしかなかったという逸話に由来する説がある。
記録に残っている最古の始球式は、1892年(明治25年)にアメリカで実施されたウェスタンリーグの開幕試合だったとされる。この時、当時のオハイオ州知事で後の第25代アメリカ大統領のウィリアム・マッキンリー(William McKinley、1843~1901年)は客席からグラウンドにボールを投げ入れた。
当時のアメリカでの始球式は現在の日本での始球式とはスタイルが異なり、客席からグラウンドに向かってボールを投げ入れるかたちで、打者もいなかった。始球式での空振りは日本で生まれたとされ、それが早稲田大学の創設者でもある大隈重信が行った始球式である。1901年(明治34年)に創部された早稲田大学野球部はアメリカ遠征の中で「始球式」というものを知り、日本でも行われた。
1908年(明治41年)11月22日、来日したアメリカの大リーグ選抜チームと早稲田大学野球部が対戦する際に、記念として日本初の始球式を実施することになった。その始球式でマウンドから投球を行った大隈重信の球はストライクゾーンを大きく外れてしまった。
その際、早稲田大学の1番打者・山脇正治(やまわき まさはる、1885~1959年)が大隈大先生の球をボールにしてはいけないと考え、わざと空振りをしてストライクにした。これ以降、始球式において打者は投手役に敬意を表すために、どんな球でも空振りをするようになったと言われている。
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